花王の株価下落はデモの成果? 古谷ツネヒラ著『フジテレビデモに行ってみた!』が酷すぎて眩暈がした(2)

「フジテレビデモに行ってみた!」第六章「花王デモとデモの課題」の一節「株価にショックを与えた花王デモ」では、チャートを引用して花王デモと株価下落の因果関係を強調、デモに一定の社会的影響があったと誇らしげに主張している。
YAHOO!ファイナンスで株価の推移を確認すると、確かに8月まで2200円台を記録していた株価が、9月に入るや2000円台を割る急落ぶりが確認できる。


尤もらしい主張に思えるが、それでは花王以外の一部上場している化学メーカーはどうだろうか。


資生堂花王程ではないが、8月上旬に落ち込みが見られる。

旭化成も同様に8月から下り坂。

東ソーも同様。

(株)クラレも8月から落ち込みが確認できるが、その後は安定している。

昭和電工も微減・・・・だろうか。

三菱ケミカルホールディングスも8〜9月を境に下落している点は共通している。

富士フィルムホールディングスも。



比較してみると、差こそあれどどの企業も8〜9月を境に株価が下落しているのが確認できる。
寧ろ9月の落ち込みから一旦回復し、年末に下降をするも2012年に入ってから再び上昇の兆しを見せている花王の株価はマシな部類にすら思える。



念のために科学メーカー以外の企業の株価チャートも無作為に引用してみたい。

トヨタ自動車

任天堂

塩野義製薬

ブリヂストン

大日本印刷

マルハニチロホールディングス



マルハのような例外もあるが、どの業種も概ね9月からの落ち込みという点では一致。





それでは、反韓流デモの本丸とも言えるフジテレビはどうか?


一年を通して見ると、上半期よりもデモが実施された下半期のほうが株価が上がっている。

こういう報道もある。

フジHD、4-9月期業績を上方修正


フジHD <4676> が10月31日大引け後(15:00)、12年3月期第2四半期累計(4-9月)の連結経常利益を従来予想の90億円→150億円(前年同期は140億円)に66.7%上方修正し、一転して増益見通しとなった。上期業績の好調に伴い、通期の連結経常利益を従来予想の245億円→309億円(前期は294億円)に上方修正した。

  会社側からの【修正の理由】
 第2四半期に入り回復基調にあったスポット収入が予想以上に増収となった他、映像音楽事業において映像のパッケージ販売や権利収入が大幅に伸びたこと、さらに、各セグメントで経費の削減が図られたことなどにより、第2四半期連結累計期間の売上高、営業利益、経常利益及び四半期純利益は前回予想値を上回る見通しとなりました。 通期の連結業績予想につきましても、上記第2四半期連

結累計期間の上方修正を反映して前回予想値を上回る見通しであります。(注)上記の予想は本資料の発表日現在において入手可能な情報に基づいて作成したものであり、実際の業績は、今後の様々な要因によって予想数値と異なる可能性があります。

http://kabutan.jp/news/?b=k201110310234

株価に落ち込みが見られる花王にしても、花王製品のシェア自体は殆ど影響が無いか、微増しているものまである。

「洗濯用洗剤の金額シェアを調べたところ、花王社に対する不買運動の影響が出始めているのがわかった」というツイートが先日話題となりました。その後どうなったのかという点を確認したかったのと、他の製品カテゴリではどうなんだろうという興味から、いくつか調査してみました。情報源は、最初のツイートの方がおっしゃっていたのと同じく、日経POS情報。不買運動という言葉が出だしたのが8月頭なので、そこからの数字です。

「洗濯用洗剤」上位15品目での花王製品金額シェア推移

8月1日〜8月7日 28.5%
8月8日〜8月14日 26.2%
8月15日〜8月21日 26.6%
8月22日〜8月28日 26.2%
8月29日〜9月4日 26.0%
9月5日〜9月11日 24.3%
9月12日〜9月18日 23.7%

確かに、金額シェアが落ちて行っているようにみえます。他の商品カテゴリもみてみます。

「台所用洗剤」上位15品目花王製品金額シェア推移

8月1日〜8月7日 30.8%
8月8日〜8月14日 31.3%
8月15日〜8月21日 30.9%
8月22日〜8月28日 30.1%
8月29日〜9月4日 31.3%
9月5日〜9月11日 28.1%
9月12日〜9月18日 31.4%

「洗髪剤」上位15品目花王製品金額シェア推移

8月1日〜8月7日 8.1%
8月8日〜8月14日 6.9%
8月15日〜8月21日 8.6%
8月22日〜8月28日 9.7%
8月29日〜9月4日 10.0%
9月5日〜9月11日 9.7%
9月12日〜9月18日 8.5%

「入浴剤」上位15品目花王製品金額シェア推移

8月1日〜8月7日 21.3%
8月8日〜8月14日 22.0%
8月15日〜8月21日 19.4%
8月22日〜8月28日 20.6%
8月29日〜9月4日 17.6%
9月5日〜9月11日 19.5%
9月12日〜9月18日 22.0%

調べた範囲だと金額シェアが落ちてきているのは「洗濯用洗剤」だけのようです。「洗濯用洗剤」の金額シェアが落ちたのは果たして不買運動の影響なのでしょうか


http://getnews.jp/archives/143069


結論から言うと、9月辺りから株価が落ち込むのは「フジテレビデモに行ってきた!」の著者・古谷ツネヒラや花王デモの参加者が主張するような「デモの成果」ではまず無いと思う。フジの株価や花王製品の金額シェアに影響が見受けられない説明がつかない。


9月は世界中で株価が最悪の月


株式市場には、様々なアノマリー(原因がはっきりしないが、特定の法則があること)が存在します。月ごとの上昇・下落のアノマリーは色々言われていますが、特に注意したいのは9月です。9月は一年で最も株価が落ち込みやすい月として知られています。

実際に過去10年(1999〜2008年まで)、9月の日経平均株価を見ても、プラス3回、マイナス7回と大幅に負け越しています。これは7月とならんで最も負け越しが多い月となっています。

これは単なる偶然ではありません。9月は世界的に見ても株式市場で最悪のパフォーマンスとなっています。「株式投資(ジェレミーシーゲル著)」によると、米国で過去120年に渡る長期のデータを分析した所、NYダウは9月だけが月間平均でマイナスになったそうです。これだけ長期間のデータを累計してもマイナスというのは、もはやアノマリーの域を超えているといえますね。


また米国だけでなく、先進国20カ国で過去36年間(1970〜2006年)のデータを分析した所、9月は全ての国で株価がマイナス(平均で年率-1%強)になったそうです。20カ国中17カ国で、9月は一年で最悪の月だったそうです。

そして9月の次にパフォーマンスが悪いのが、10月だそうです。一日として史上最悪の暴落を記録したブラックマンデーも10月(87年10/19)でした。

ここまで全世界的に9月〜10月の株価が下落するという事は、アノマリーなどではなく、明確な理由があるはずです。

最も大きいといわれる原因は、投資信託ヘッジファンドの決算が近いことです。アメリカの投資信託は10月決算が多く、損益通算(税金を減らす為の株式売却)の為に9月頃から徐々に売り物が増えると言われています。

またヘッジファンドも10〜11月が決算である事が多いようです。ヘッジファンドは通常の投資信託よりも、解約対策として現金を多く保有する必要があり(少数の富裕層からしか金を集めない為)、決算前の9月辺りから現金を多めにすべくポジション整理を行う傾向があるようです。またヘッジファンドレバレッジを掛けて株式運用しているケースも多いので、株式売却する際のインパクトも大きくなりがちです。

このように、アメリカでは9月頃から明らかに株価にとってマイナス圧力になる事象があります。アメリカの株式市場の動向は、世界の株価にも大きく影響しますから、9月に日本の株価が下落する理由も、アメリカの煽りを受けていることが主因といえそうです。

長年のトータルでマイナスになっているといっても、9月に必ず株価が下がるという訳ではありません。しかし、これだけはっきりした傾向がある訳ですから、8月から10月まではあまり焦らず、株価が下がりきる(傾向にある)11月位から投資をする方が賢いかも知れませんね。


http://www.777money.com/tameru/9gatu.html


上記の理由と、たまたま大規模なフジテレビデモ・花王デモが実施された時期が近かったが故の偶然と解するのが妥当であろう。