日之丸街宣女子 第七話感想

ジャパニズムの最新号に「日之丸街宣女子」(以下日之丸)第7話が掲載されていた。

ジャパニズム26

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前号から扱う題材がヘイトスピーチから海外での慰安婦像設置にまつわる日本人差別へと移った日之丸であるが、今回は特に言及したくなるような展開でもなく、簡素にストーリーをまとめるならば




・ヒロインの朔川奏と土基創(学業成績はともにクラスで男女ドベ)が従軍慰安婦問題を自由研究のテーマにしたいと教師に申し出る。上野千鶴子氏似の女性教師が難色を示す一方、奏の友人である、渡米した須藤桜良が従軍慰安婦問題で深刻な差別の被害に遭っている実態を男性教諭に伝える。

・咲良は差別の被害に遭っている事実を親にも相談できずに一人悩む。韓国系?の女子生徒が従軍慰安婦問題に関する歴史の授業で咲良を中傷し、他のクラスメイトにも見て見ぬふりをされてその苦しみは一層深まる。

・一方で奏達が自分のために奔走してくれていることを気にかけ、勇気を持って不当な差別に立ち向かわんとする意気を示唆したところで今回は御仕舞い。




こんな感じだろうか。
従軍慰安婦像設置にまつわる現地日本人への差別」自体が都市伝説と言ってよい右派によるデマである事は論を待たぬし、第6話感想でも述べたけれども差別問題に於いては日本よりも数段鋭敏な米国で、多くの人が目撃している咲良へのヘイトクライムを誰も取り上げないのは、不自然を通り越してご都合主義にもほどがあるという印象しか受けなかった。




作末の富田安紀子氏と奏のミニレポは日之丸にまつわる反ヘイトの反応とそれに対する反論。
有田芳生氏の帯に「不逞鮮人」の四文字を躍らせた日之丸はヘイト本だ、あまり売れていないとするツイートに対し、アマゾンの売り上げランキングを提示して反論するのはまだしも、「不逞鮮人」をヘイトの範疇として認識できていなかったのは呆れるしかない。
高遠るい氏の日之丸関連の発言やトキワ荘プロジェクトに関する一連の騒動から中止決定に至る流れを反ヘイトの言論弾圧と厳しく糾弾し、反面自分達(在特会)はデモをやるにもきちんと許可を得ていると主張。欄外に手書きで「どっちが正義か一目瞭然だべ…」と記していることから余程腹に据えかねていたのであろう。
或る団体が公の許可を得てデモをすることと、そのデモで主張される内容が正当か否かはまったく別の問題だし、その論理で言えば反ヘイト側が主催するデモの多くもまた公的な許可の元に行われている。
そして、近年の反ヘイト・反レイシズムデモの参加者はヘイトデモの参加者を大きく上回り、幾つかの地方自治体はヘイトデモを独自に規制する条例を可決しているのが現実なのだ。


余談ではあるが、ヘイトスピーチという概念への認識不足は日之丸のみならず青林堂ぐるみのように思える。ジャパニズム最新号の表紙に「安倍叩きヘイトスピーチ」なる文言が記されているのだが、内容は産経新聞の記事と同レベルと申し上げればその酷さが理解していただけるだろうか。



【政界徒然草】国会前デモに集まるヘイトな人々 「あなた公安でしょ?」 記者はマスク姿に詰問され… - 産経ニュース


ヘイトスピーチ」を本来の意味や定義から遠く離れたものにも用い、軽々しく扱う事によって相対的に本来の「ヘイトスピーチ」や「ヘイトクライム」をもたいした問題ではないかのように意図的に見せかけようとしているのであれば極めて悪質な行為だし、単にヘイトスピーチの定義すら理解できていないのであればただの無知蒙昧である。