嘘つき産経

私が最初にこのニュースに接して際の感想は、『いかにも産経新聞やその愛読者が喜び食い付きそうな記事だなあ』というものでした。
身を粉にして我が国の防衛に務めている自衛官への蔑視・及び差別的とも言える区役所の対応と、その背後に左翼市民団体の圧力があった・・・。こんなニュースを見聞きしたら、誰だって自衛官への同情と区役所や左翼団体への憤りを抱く事でしょう。
しかし、左翼勢力が強く、自衛官への偏見が半ば公然のものであった頃ならまだしも、国民の多数が自衛隊の存在を是とする現代に於いて区役所がこんな対応するか?偏向的な市民団体が自衛隊の活動に抗議することはあったかもしれないが、一々区役所がそんなクレームを相手にしたら、かえって後々問題にならないか?という疑問も同時に有しました。

一部の区議や市民から訓練への抗議は存在していたようですが、それ自体は言論と表現の自由を有する日本では何の問題もない行動です。



http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120724-00000301-kinyobi-soci

陸上自衛隊が再び物議を醸す大規模訓練の実施を東京都内で計画している。七月一六日夜から翌一七日朝にかけて、都内二三区内の都立公園や区役所に迷彩服を着た部隊が展開するというもので、都内全域に及ぶ自衛隊単独での部隊展開は初めて。訓練の中止を求める日本平和委員会の佐藤光雄代表理事と二三区の区議、住民ら約二〇人は一〇日午後、防衛省を訪れ、訓練の中止を求めた。

 展開訓練を実施するのは陸自第一普通科連隊(東京・練馬区)。同隊については先月一二日、朝の通勤・通学時間帯に練馬区などで迷彩服で武装したレンジャー部隊の行進訓練を実施し、周辺住民から中止を求める申し立てが裁判所に出されたばかり。今回の計画によると、約三一〇人が迷彩服着用で一六日午後七時から順次、練馬駐屯地を出発、翌一七日午前にかけて駒沢公園や上野公園、水元公園舎人公園などの公園や各区役所へ向けて行進する。「災害対処」が名目だが、都民の参加はなく自治体もほとんど関与しない。

 同日は、防衛省運用企画局事態対処課の職員は質問に答える形で「首都直下型地震に対応する訓練で、自治体と連携し実施するもの。住民への周知も自治体にお願いした」などと説明。これに対し住民側は「嘘を言っては困る。連携を拒否している自治体もあり、住民の参加もない。周知もされていない。北区はお断りした」などと抗議した。二三区のうち一三区が今回の訓練受け入れを拒否しており、防衛省側は返答できなかった。

 佐藤代表理事は「自治体や住民抜きの災害対処などあり得ない。これは防災の名を借りた軍事訓練だ」と述べ、同行した種田和敏弁護士も「自衛隊法では、災害出動は関係自治体からの要請が前提となる。今回のように自衛隊が単独で周知もせずに実施することになると、自衛隊法の建前に反するのではないか」と疑問を呈していた。

片岡伸行・編集部、7月13日号)




名指しで批判された十一の区は、何れも産経新聞の報道を事実無根として抗議の意をあらわにしています。今のところ事実関係は分かりませんが、産経新聞と言えば江沢民死去という歴史に残る大誤報をよりにもよって号外でやらかしたり、昨年のカンニング事件でも誤報をやらかしたり(しかも責任者は処罰されるどころか栄転)、産経政治部エース(笑)阿比留瑠比記者がネットのガセネタを真に受けて記事を書き、辻元清美議員から訴えられたりと前科に事欠かないどーしょーもない新聞です。誤報・捏造の類を抜きにしても、名指しされた全ての区が産経の報道に真っ向から反論するというのは常識的に考えれば異常事態です。となれば、どうしたって普段の行いが悪い方の言い分を疑わざるを得ません。


千代田区総合ホームページ - 平成24年7月23日付産経新聞朝刊記事について

http://www.city.chiyoda.tokyo.jp/service/00144/d0014461.html


7月23日産経新聞自衛隊訓練の記事について 中央区ホームページ

http://www.city.chuo.lg.jp/chumoku/sankeisinbun/index.html


港区公式ホームページ/陸上自衛隊による統合防災演習の新聞記事について

http://www.city.minato.tokyo.jp/bosai-anzen/bosai/ensyu.html


新宿区:陸上自衛隊による統合防災演習の新聞記事について

http://www.city.shinjuku.lg.jp/anzen/snjk001113.html


陸上自衛隊第1普通科連隊災害対処訓練に関する報道について 目黒区

http://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/anzen/bosai/kunren_hodo/index.html


世田谷区 自衛隊災害対処訓練の報道について

http://www.city.setagaya.tokyo.jp/020/d00040862.html


渋谷区/陸上自衛隊による統合防災演習の新聞記事について

http://www.city.shibuya.tokyo.jp/news/oshirase/jieitai_kunren.html


7月23日産経新聞自衛隊訓練の記事について « 中野区公式ホームページ

http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/102500/d014995.html


杉並区 区からのお知らせ - 自衛隊による統合防災演習新聞記事について

http://www2.city.suginami.tokyo.jp/news/news.asp?news=14005


自衛隊災害対処訓練の新聞報道について|東京都北区

http://www.city.kita.tokyo.jp/docs/emergency/830/083053.htm

特に豊島区は二度に渡り公式ホームページで厳重抗議をするなど、強い憤りをあらわにしています。

平成24年7月23日付産経新聞朝刊記事について(抗議)│豊島区公式ホームページ

http://www.city.toshima.lg.jp/koho/027635.html


http://www.city.toshima.lg.jp/koho/027640.html


昨日23日付貴社掲載記事「統合防災演習 東京23区に庁舎立ち入り要請/『迷彩服見せるな』11区が自衛隊拒否」について、事実に反する記事が掲載されたことに対し、即日抗議を行いました。これに対し、昨日午後、貴社社会部編集委員将口泰浩氏(担当編集デスク)並びに今回の記事を書かれた担当記者三枝玄太郎氏の両名が本区に来庁され、今回の誤報記事掲載の経緯を説明されるとともに、ご迷惑をかけたとの謝意を示されました。本区としては、多くの読者の方々が誤解されている状況を解消するためにも、改めて訂正・謝罪記事の掲載を強く求めたところです。
 しかしながら、本日24日付貴紙朝刊コラム「産經抄」において、昨日の記事の訂正はおろか、昨日の記事を前提として、立ち入り拒否をしたとされる区の防災担当職員を誹謗する記事が掲載されました。これに対し、将口氏に確認を求めたところ、担当部署が違っていたため、情報が共有化されていなかったと説明されましたが、全く納得の得られるものではありません。昨日来、インターネット上でも貴紙誤報記事をめぐって混乱が生じている状況の中で、貴紙の看板コラムである「産經抄」で、再び誤った内容を掲載することは、マスメディアとしての自覚に著しく欠けるものと言わざるをえません。
 既に昨日申し上げましたように、16日、17日に実施された自衛隊演習において、本区防災課職員は協力しております。また、本コラム記事内容は、事実に基づかないばかりでなく、地域の最前線にあって、24時間体制で防災・救援活動にあたっている防災担当職員の士気を大きく阻害するものです。自衛隊の職員も自治体防災担当職員も、等しくそれぞれの職務に専心しているということに対する配慮に著しく欠けた内容であることが何よりも残念でなりません。
 ここに再び、厳重に抗議するとともに、23日付朝刊記事並びに本日付朝刊「産經抄」それぞれについて、謝罪・訂正記事の掲載を強く求めます。

>将口氏に確認を求めたところ、担当部署が違っていたため、情報が共有化されていなかった

・・・
すげーなあ、こんな初歩的なミスを犯す人間でも全国紙の編集委員が務まるなんて。





さて、25日の産経新聞朝刊に「おわび」なる囲み記事が掲載されていました。実に小さく、余程紙面を注視していなければ読み過ごしてしまいそうな位に目立たなく、ひっそりこっそりあっさりと。


おわび
23日付「統合防災演習 東京23区に庁舎立ち入り要請 11区が自衛隊拒否」の記事および24日付「産経抄」について、11区で実施されなかったのは待機(宿泊)訓練でした。通信訓練については自衛隊の立ち入りを認め、実施されていました。
なお、通信障害発生のおそれがある千代田区では通信訓練をおこなっていません。関係者におわびします。



http://beebee2see.appspot.com.nyud.net/d/agpiZWViZWUyc2VlchULEgxJbWFnZUFuZFRleHQYh77tBgw.jpg



一見謝罪の体を為しているように見えるお詫び記事ですが、こんなものは謝罪のうちにも入りません。
本当に申し訳ないと考えているなら、紙面の目立つところに十分なスペースを設けて記事を掲載し読者に分かり易く伝えるべきですし、24日の産経抄でもこの問題を取り上げているのですから、翌日の産経抄で再度言及するのが筋です。幾つかの区の公式ホームページでもそれを要求していましたが、当然であり、もっともな話です。
更に言えば、ヤフーなどのポータルサイトmixiなどのSNS等、あちこちのウェブサイトに記事を配信した以上、お詫び記事も同様に紙面だけではなくウェブサイトを通じて配信しなければ不十分です。そうでなければネットのみから情報を得、産経新聞本紙を購読していない人達への誤解を解くことができません。
真摯に関係者各位へお詫びをするつもりなら、最低限このくらいはするべきでしょう。

ついでに言えば、上記の簡素なおわび記事だけでは何故今回のような誤報が発生してしまったのかという考察と原因究明、及びそれへの言及が全くありません。先述の豊島区へのお詫び訪問で「情報が共有化されていなかった」という記述こそ、お詫び記事に何よりも優先して記載しなければいけないことでしょうに。




産経の馬鹿さ加減を語るのも飽きてきたので話題を変えます。



唐突ですが、「藁人形論法」という詭弁のテクニックがあります。


ストローマン - Wikipedia

「議論において対抗する者の意見を正しく引用しなかったり、歪められた内容に基づいて反論するという誤った論法、あるいはその歪められた架空の意見」を指す言葉ですが、迷彩服立ち入り拒否事件に対するネットユーザーのなかには、事実を歪めた藁人形に五寸釘を打って溜飲を下げている人々が見受けられます。


曰く「自衛隊を否定する奴等は有事の際に彼らを頼るな!」
(訓練への反対を自衛隊そのものの否定へと摩り替えている。しかも反対している人は全体からみればごくごく少数なのに)

曰く「自治労は左翼で反日だから悪。自衛隊は正しい」
(その先入観も大概だが、産経新聞の記事を肯定することと自衛隊を肯定するのがどうしてイコールになるの?)

曰く「千代田や中野の区役所の職員には三国人が多いからありえる話だ」
(根拠も意味も不明。)



誤報・捏造の一義的な責任は言うまでもなく情報を発したマスコミにありますが、いい加減で煽動的な飛ばし記事を鵜呑みにして、いや、いい加減で不確かな記事でも「自衛隊に仇なす者」や「反戦左翼」へのバッシングに利用できれば事実関係は二の次でよいという思考は「藁人形論法」の奴隷であり、「マスゴミ」の間接的な協力者といっても良いでしょう。




自戒の意味も込めて長々と駄文を垂れ流しました。


産経新聞